いい時間

みんな ほっこり いい時間。そんな対談セミナーです。

第3回「いい時間~WEB制作に携わる人必見! 気持ちを動かすWEBコミュニケーション」公式レポート

『みんな ほっこり いい時間』をコンセプトにした対談型セミナー「いい時間」の公式レポートです!


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今回のレポートは、第3回からメンバーに加えてもらった砂流(スナガレ)が書かせていただきます。

7月22日に開催された第3回目のテーマは、『気持ちを動かすWEBコミュニケーション』。このテーマをお話いただく『いいゲスト』としてこちらのお二人をお迎えしました。



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佐藤ねじさん(右)
面白法人カヤックのスーパーデザイナー。

tha ltd.の西村斎輝さん(左)。
tha ltd.の平社員と名乗っておられますが、スーパーデザイナー。
愛称はbouze(ボウズ)さん。


お二人とも肩書は『デザイナー』なのですが、ねじさんはアートディレクションや企画が中心、bouzeさんはプログラムや実制作が中心と、仕事内容は異なるお二人。そのためか、発想法や視点の置きどころもまったく異なり、『気持ちを動かすWEBコミュニケーション』というテーマに対して、ねじさんは『いいコンテンツ』、ボウズさんは『いい選択』という切り口でお話をしてくれました。

公式レポートでは、お二人のプレゼン内容を中心にレポートをしていきます。
プレゼン内容が非常に濃い上に、ボリュームがあるため、まずはセンテンスをまとめた『いいまとめ』をご覧ください。


●これだけは覚えておきたい『いいまとめ』


ねじさんの『いいコンテンツ』

▶いいコンテンツとは…

 ・さわって気持ちいいもの
 ・美しいもの
 ・笑えるもの
 ・泣けるもの
 ・考えさせるもの
 ・違和感のあるもの
 ・脳に「!」を生むもの

▶いいコンテンツを考えるには「ブルーパドル」を探すこと

ブルーパドルとは水たまりのこと。レッドオーシャンではなく、ブルーオーシャンでもなく、ブルーパドル。すなわち、ちっちゃなスキマを探す努力をする。まだ誰も見つけていないスキマを見つけることができれば、新しい価値が生まれ、その場所で自動的に1位になれる。



ボウズさんの『いい選択』

▶いい選択をすると、ものづくりはうまくなる

ものづくりは、「色は? 形は? フォントは?」など、ひとつひとつの選択を積み重ねていった形。選択を大事にすることで、ものづくりはうまくなる。

▶『いい選択』をするコツ

・並べる
デザインが1つしかない場合、選択肢がないため良さも悪さも見えてこない。2つ以上を並べることで、どれが良いかを判断できるようになる。

・残す
並べられるようにこまめにデータを残しておく。パソコンで作業していると上書き保存をしてしまいガチだが、ある程度のところで別名保存をする。ダメだろうと思うものも並べるために残すが大事。

・戻る
はじめて見た迷路を戻らず抜け出せないように、行き詰まった時には戻ることも大事。戻ろうと思った時、人間は目の前にあるものより、頭のなかにある記憶を美化してしまうので、並べて判断をすることが重要。戻れるようにするためにもデータは残しておく。


それでは、ここから本格的なレポートを開始します。
まずは、ねじさんの『いいコンテンツ』の話から。

●ねじさんの『いいコンテンツ』の話

冒頭の自己紹介で「アイデア×デザイン×演出」の合わせ技が得意と語り、マッサージやカレーと同列で「アイデア出し」や「メモ」が好きなねじさん。

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ねじさんは、大きく3つの項目について話をされました。

・いいコンテンツとは
・考え方『ブルーパドル』
・ブルーパドルの事例紹介


まずはねじさんが考える『いいコンテンツ』の話。
ねじさんが『いいコンテンツ』として挙げられたものがコチラです。

▶いいコンテンツとは…

 ・さわって気持ちいいもの
 ・美しいもの
 ・笑えるもの
 ・泣けるもの
 ・考えさせるもの
 ・違和感のあるもの
 ・脳に「!」を生むもの
 (次点:つぶやきのような作品)

ねじさんがこの中で狙っている領域は、『考えさせるもの』『違和感のあるもの』『脳に「!」を生むもの』の3つ。
『脳に「!」を生むもの』については、『脳にビックリマークを生むものは、マッサージに近いのではないか。笑えるよりも、刺激されたことのない脳の部分にピンとくるものを与えられたらいいなと思っている』と話をされました。確かに、脳が今まで受けたことがない刺激を与えられれば「!」な気持ちになると思いますし、記憶にも残る『いいコンテンツ』になりそうです。

▶脳に「!」を生む考え方「ブルーパドル」

では、どうやって脳に「!」を生むような刺激を考えているかについてですが、ねじさんは『ブルーパドル』を探しているとのこと。

ブルーパドルとは水たまりのこと。レッドオーシャンではなく、ブルーオーシャンでもなく、ブルーパドル。すなわち、ちっちゃなスキマを探す努力をする。まだ誰も見つけていない、スキマを見つけて価値あるものになれば、それが脳に「!」を生む。


一般的には、『競合がたくさんいる市場(レッドオーシャン)ではなく、まだ未開拓の市場(ブルーオーシャン)を探す』ことが大事だと言われていますが、ブルーオーシャンはなかなか見つけられません。ねじさんが提唱しているのは、ブルーオーシャンよりもっともっと小さなスキマ『ブルーパドル(水たまり)』を探そうという話です。この考え方が凄いのは、レッドオーシャンの中にも必ずスキマはあるので、そこをとることで新しい価値を生み出すことができる(脳に!を生む)こと。

この、レッドオーシャンにも新しい価値を生み出す『ブルーパドル』について具体的事例を持って解説をしてくれました。


▶しゃべる名刺

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ねじさんが事例として解説をしてくれたのは「名刺」。名刺といえば、おしゃれなものから、サイズ違い、匂いが付いているものや、食べれるものまで数々の名刺が世の中に溢れているレッドオーシャンです。そのレッドオーシャンの中からスキマである『ブルーパドル』を探して作ったのが『しゃべる名刺』。

しゃべる名刺とは…
iOSエンジニアの堤修一さんのために制作した名刺。名刺には穴が空いており、iPhoneの上に名刺を置いてアプリを起動するとタップした情報に合わせてiPhoneがしゃべったり、電話をかけることができる


http://tsutsumi.nezihiko.com/


しゃべる名刺 - YouTube


『しゃべる名刺』は、
iPhone5と名刺が大体一緒のサイズ
分厚い紙の上からでもiPhoneを触れる
という2つの『ブルーパドル』を見つけて組み合わせて作成されたものだそうです。

iPhoneを使って名刺を取り込んだりなどはありましたが、iPhoneの上に名刺をのせることでiPhoneが『しゃべる名刺』になるというものはありませんでした。これは、名刺に新しい価値が生まれていますし、脳に「!」も生んでいます。このようにして、名刺というレッドオーシャンの中でも、誰もやっていないスキマを探すことで、『いいコンテンツ』は作れるとのことでした。


▶貞子3D2 スマ4D

ほかにも、映画のプロモーションにスマホを連動させた『貞子3D2 スマ4D』についても話をされました。映画のプロモーションにスマホを連動させる。少し前では新しいことでしたが、今ではレッドオーシャンになってきました。そのレッドオーシャンに対してねじさんは、『映画館でやってはいけないご法度をやり尽くす』ことでブルーパドルを見つけたそうです。

貞子3D2 スマ4Dとは…
映画『貞子3D2』スマ4D版の上映中に、専用のスマホアプリを起動すると、本編に連動した別次元の恐怖が楽しめる、映画会の常識を打ち破った上映スタイルを提案。映画とスマホが連動し、
・スクリーンの中の人から電話がかかってくる
・(上映中に)スマホが突然光りだす
・『スマホに向かって大声で叫んで助けを呼べ!』という指示がでる
・LINE経由で「なんで助けてくれなかったの?」という大量のメッセージ通知がとんでくる
などの演出が映画の上映中に発生する。


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映画が終わった後もスマホ連動は続いており、夜中の0時に貞子から着信がくるドッキリ演出まで仕掛けました。(恐怖をさらに増大させるために電源を落とさないと消えない仕様)

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映画とスマホを連動させたプロモーションは数多くありますが、『映画館のご法度をやり尽くした』また、『ここまで映画と現実を連動させた』ものはありませんでした。これも、映画に新しい価値が生まれていますし、脳に「!」も生んでいます。

このような考え方で、『まだ誰も見つけていないスキマ(ブルーパドル)を見つけて、価値あるものにすることで『いいコンテンツ』を作っている』とのことでした。


▶ねじさんのアイデアのため方

質疑応答の中で、アイデアのため方についてねじさんが話をされていたのでご紹介します。
ねじさんは、好きなものに「メモ」を入れるほどのメモ好き。普段は「DAY ONE」という日記アプリに思いついたことやアイデアをためているそうです。それを週末の夜に2時間ぐらいかけてノートに書き写しているとのこと。1回アプリにためて寝かせておくことで、メモしたことを客観的に見れるようになるので、良いアイデアかそうでないかの判断もできるそう。このような形で、普段からアイデアをためているからこそ、他の人が見逃してしまうブルーパドルに気づけるのだと思います。

ねじさんは、アイデアのヒントを探している人、ノート好きの人に向けてブログをされているので、気になった方はコチラもチェックすることをオススメします。

アイデアの0.5px




●ボウズさんの『いい選択』の話

続いては、ボウズさん。ボウズさんは『いい選択』について話をされました。まずはボウズさんが手掛けられた仕事の紹介から。


▶UTme!

誰でもかんたんにオシャレなオリジナルTシャツをデザインすることできる『UTme!
かんたんにデザインできるだけでなく、人のデザインを見たり、SNSに共有することもできる。
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UTme! - スマホでデザイン、君だけのUT。 - YouTube


▶デザインあ展

こちらは、WEBデザインではないのですがNHKの大人気番組「デザインあ」の展覧会。
ボウズさんは「モノ・オトと映像の部屋」の映像制作を担当されたそうです。


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「デザインあ」展 - Design Ah ! HD - YouTube



▶ものづくりは樹形図

ボウズさんはデザイナーをはじめた当初、ものづくりは『迷路』だと感じており、終わりのない混沌としたプロセスのようなものだと思っていたそうです。

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ですが、経験を積み重ねていく中で『迷路』ではなく、『樹形図』ではないかと感じるようになったと語っていました。
それを図にしたものがコチラです。

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迷路が樹形図になることについては、迷路を樹形図に変換するアルゴリズムもあるそうで、最近は自分の頭の中もこのように思考が整理されてきたそう。


Maze Tree - YouTube

実際の思考は上記の図のように複雑だと思うのですが、それを簡略化した図も用意されていました。

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図にあるように、『ものづくりは、WEBデザインでいえば『色は? 形は? フォントは?』のような選択の繰り返し。積み重ねたものが完成品になるので、いい選択をすることが大事になってくる』とボウズさんは話をしました。


次に、ボウズさんが『いい選択』をするために実践していることを、『いい時間』のロゴを使って説明してくれました。

▶『いい選択』をするコツ

▶並べる

デザインが1つしかない場合、選択肢がないため良さも悪さも見えてこないので決められない。2つ以上を並べてみることで、どれが良いかを判断できるようになる。

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▶残す

試行錯誤した過程を上書き保存するのではなく、こまめにデータに残しておく。パソコンで作業をしているのであれば、こまめに別名保存をする。試行錯誤の過程も並べて比較すると選択ができる。


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▶戻る

はじめて見た迷路を戻らず抜け出せないように、行き詰まった時には戻ることも大事。。戻ろうと思った時、人間は目の前にあるものより、頭のなかにある記憶を美化してしまうので、並べて判断をすることが重要。戻れるようにするためにもデータは残しておく。


最後の戻るについては、質疑応答で「戻る決断はいつするのか?」、「チームで動いていると戻りづらくないか?」という質問がでました。戻る決断については、『やってもやっても進んでいかない状況の時や、目の前にあるのが良くないと感じたら責任感を持って戻っている』そうです。また、戻りづらさについては、『樹形図を見せて、この工程まで戻って新しいデザインを作った方が良いと提案する』と答えていました。


▶砂流が感じたこと

今回のテーマである『気持ちを動かすWEBコミュニケーション』に対して、

広い視野を持ってスキマを探すことで気持ちを動かす(ねじさん)
1つを深く深く掘っていくことで気持ちを動かす(ボウズさん)

と、対照的なアプローチを聞ける機会になりました。
対照的なアプローチをとっているお二人ではありますが、その中で共通しているなと思ったのは『誰もやっていない』ことにこだわっていること。

まだ誰も見つけていないブルーパドルを見つける(ねじさん)
誰でもできることを、誰でもできないぐらい良くする(ボウズさん)

お二人とも他の追随を許さないレベルで『誰もやっていない』ことをやっています。だからこそ、人の気持を動かすことができるんだと強く感じました。

これは余談ですが、お二人共とも15分という持ち時間に対して40枚を軽く超える資料を用意されていました。こういうところからも『誰もやっていない』ことをやりきる姿勢が感じられます。

お二人とも『いい時間』をありがとうございました。

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◆砂流 恵介(すながれ けいすけ)
1983年、広島県生まれ。秋葉原でPCショップ販売員の経験を得て、日本エイサーへ入社。宣伝・広報を担当する。2013年12月退社。手段を選ばないゲリラ的なPRを得意とする。Twitterアカウント→「@nagare0313





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おかげさまで大盛況で終えることができた第3回『いい時間』。足を運んでいただいた皆さん、ありがとうございました。今回ハッシュタグ「#いい時間」を使って感想をツイートしてくれた人の中から、今後のいい時間を無料で参加できる『いい時間 エターナルパス』をお一人にプレゼントすることになっていました!



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このエターナルパスがあれば「タダ酒・タダ飯」は当たり前。かつスタッフに提示すると媚びの最果てみたいな態度で接させていただきます。そんな栄えある一人目のエターナルパス受賞者は…



@umaretateeさんです!おめでとうございます! 本来はアイコンが可愛い女性を下心ありきで選ぼうと思っていたのですが、感想をブログにまとめてくれたのが決め手となりました。現場での質問も素晴らしかったです。@umaretateeさん、何らかの形で必ずお渡ししますのでお待ちください。

●アンケートにご協力ください

今後より「いい時間」をご提供したいので、参加者の正直なご意見・ご感想をお待ちしております。参加したいテーマやゲストのリクエストも受け付けておりますので。よろしくお願いします!

https://docs.google.com/forms/d/1L96n2FIn1Ytk4EIkXsLKZJWFosgrdVROSW9WZghADyA/viewform


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最後に告知。2014年9月8日(月)にシェアオフィス&コワーキングスペースいいオフィス』をオープンします。場所は、これまで『いい時間』を開催してきた上野共同ビル3F。200人収容のイベントスペース、広いキッチン、クロークなどを完備しています。9月末開催予定の『いい時間』は、この『いいオフィス』でやります! 乞うご期待!

※詳しくはこちら
http://iioffice.liginc.co.jp/


■「いい時間」とは?
株式会社バーグハンバーグバーグの徳谷柿次郎(WEBディレクター/広報)と株式会社LIGの吉原ゴウ(副社長)が思いつきで始めたトークショー&セミナー運営団体。「いい場」に「いい人」を呼んで「いい話」を聞くための集まりで、基本的に2人が知りたいことを軸に展開し、「いい時間」にしようという企画。


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